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地球惑星システム科学講座 Q & A

●地球惑星システム科学分野について

Q. 「システム全体の挙動を解析する」という研究はどのようにおこなわれてきましたか(おこなおうとしていますか)?

地球惑星システム科学はまだ進化途上で,地球や惑星システムが誕生してからこれまでの全体としての挙動を完全に記述するところまでは至っていません.しかし,これまでにサブシステムの挙動の解析やサブシステム間の相互作用の解明として,惑星表層システムに生命存在可能条件を持続させるのに必要な条件の検討,地球や火星の気候の安定状態の解析,地球内部の活動が表層活動に影響を与えた証拠の探索,太陽系や地球システムが長期間,短期間にどのように進化・変動したかの実証的検証などをおこなってきました.私たちは,個別対象の研究をおこなう際も,それが地球惑星システム全体や他のサブシステムにどのように影響するかという視点を常に持ちつつ,研究をおこなっているため,これまでの研究を通じて,地球や惑星のある挙動を理解するために考慮する必要のあるシステムの切り出し方や,システムの安定性をつくりだすサブシステム間の相互作用がなにかなどが明らかになりつつあります.このように常に全体の働きを考えるという意識を持った研究者間の相互作用によって,システム全体を記述する方法を産み出すことができないだろうかと期待しています.また,この科学的営みに若い院生や研究者が多く参加してくれることを私たちは望んでいます.

Q. この分野の将来性や可能性を聞かせて下さい

地球や惑星をひとつの巨大システムとして捉える見方は,これからの地球惑星科学の進むべき方向のひとつだと考えています.私たち自身が地球惑星システム科学を確立しようとしていることからもわかるように,学問として新しく,将来の発展が大きく期待される分野です.2006年3月におこなわれた地球惑星科学専攻の外部評価においても,私たちの取り組みは評価していただき,今後この分野の研究者を多く輩出することを期待するとのコメントをいただきました.

Q. 多様な要素を扱っているという点で地球惑星システム科学講座の特徴を紹介していただきましたが,他の講座との違いはどういう点でしょうか?例えば宇宙惑星科学講座との決定的な違いは何でしょうか?

私たちの講座の研究対象は,地球惑星科学専攻の他講座(大気海洋科学,宇宙惑星科学,固体地球科学,地球生命圏科学)と重なりがあるため,地球惑星システム科学講座においておこわれている研究が,他の講座いずれかにおいてなされていても少しもおかしくありません.私たちは多様な研究対象の科学を個別に深めることもおこないながら,他の要素との相互作用を考え,多圏相互作用の結果としての地球や惑星の振る舞いを理解することを常に念頭に置いています.これが他の講座との違いだと考えています.

例として,宇宙惑星科学講座との違いについてですが,宇宙惑星科学講座では惑星探査を中心として,現在の太陽系や惑星を徹底的に理解するという重要な研究をおこなっていますが,地球惑星システム科学講座では,太陽系や地球を個別の対象としてではなく,太陽系や地球の誕生やその後の地球の進化を,宇宙や惑星系における様々な相互作用の結果として捉え,システムの誕生や進化が普遍的であったか,特殊なものであったかを理解することを目的とし,理論的な検討や実験による物質分化を支配する反応の定式化などを進めています.

Q. 幅広い分野をやっているということで「広く浅く」の「浅く」になってしまわないんですか?

私たちの研究対象は実に多様ですが,個人個人はそれぞれ深く極めた研究対象や研究手法を持ち,そこに軸足をしっかりと置いています.その上で,日常的な議論を通じて,お互いの研究背景や手法を理解し合い,多圏間相互作用を考慮したシステム科学の構築を目指しています.地球や惑星をシステムとして捉えるためには,対象を広く多角的に捉えることが重要で,幅広い知識や様々な分野での研究への理解が要求されますが,「広く浅く」だけでよいとは考えておらず,必ず何か自分の武器となる研究手法や対象を身に付けた上で,地球惑星システムを考えてもらいたいと思っています.

Q. 地球惑星システム科学をおこなうにあたって必要であると考えることは何ですか?また,今,何を主に勉強しておけばいいですか?

地球惑星システムにおけるサブシステム間相互作用を理解するためには,それぞれのサブシステムの科学を理解することが必要です.地球惑星科学は,物理学,化学,生物学などの上に成り立つ学問なので,どのようなサブシステムの科学を理解するためにも物理や化学といった基礎学問を習得しておくことが望まれます.研究対象によって,特に必要とされる基礎学問が異なるので,各教員にお問い合わせいただくのがよいと思います.

また,地球惑星システム科学では,地球や惑星の存在やその安定性,変動を相対視し,普遍性や特殊性を論じることを目指しているため,研究対象を深く見つめる目とともに,俯瞰的に捉える目も持つ必要があります.このような視野の切替ができることは重要だと思います.さらには,地球や惑星で起こる様々な現象に興味を持ち,常に積極的に知識を吸収することも重要であると考えます.

Q. 社会とはどのように関わっていますか?

理学における学問と社会との関わりは多様ですが,地球惑星科学は,その研究成果に対する社会的期待の大きなものです.とりわけ,地球表層環境については,全地球的な課題に直接関連しています.例として,気候変動に関する政府間パネル(IPCC)にも取り上げられている気候変動に伴う海水準の変動に関する研究,環境変動に対する生態系の応答に関する研究,地球温暖化で破壊が懸念される環礁島の保全に関する研究,アジアのモンスーン気候システムと農業生産との関連に関する研究などが挙げられます.これらの研究の中では,現地の研究者や政府関係者(大統領とも!)とも交流を持ち,研究成果を積極的に還元しています.

固体地球や惑星に関するシステム科学的研究は時間・空間スケールが,社会とは大きく異なるため,直接的な還元は難しいですが,「地球や人類が宇宙に希有な存在であるのか,それとも普遍的な存在であるのか」と言う根源的疑問に対して,地球惑星システム科学から見た答を提供することで,知的好奇心をくすぐり,新しい科学の芽を育むことができるのではないかと考えています.若い人たちにこの分野のおもしろさを伝えるために,私たちは講座全体で,普及書“進化する地球惑星システム”を出版するとともに,メンバーの多くが,講演会や出版物などを通じ,普及活動を積極的におこなっています.

●進路について

Q. 修士課程修了後にはどういった進路がありますか?

修士課程終了後は,年度によるばらつきがありますが,専攻の入試情報ページで紹介されているように,官公庁や製造業,情報産業が多くなっています.

博士号取得後は,多くの場合,国内外の研究機関で任期付研究員(ポスドク)のポストに就きます.博士号取得後数年の間に,新たな研究テーマを発掘したり,博士課程でおこなった研究を深めるなどして,研究の幅や奥行きを広げ,常勤の研究職を目指すことになります.日本国内に限らず,海外の大学や研究機関でポスドクとして国際的な研究に関わる方も多くおられます.ポスドク以外の進路としては,関連分野の企業に就職された方もいます.また,当講座卒業後,ポスドクを経験され,大学教員や国立研究所・独立行政法人の研究所の研究員になられた方もいます.

Q. 研究者を目指していますが,この分野の研究者になるのは難しいでしょうか?

私たちは博士課程院生が一人前の研究者としての実力を備えられるように,研究グループでの日常的なセミナーや,院生生活の節目節目でおこなわれる講座全体での研究発表会を通じて,教育をおこなっています.

最近は,自然科学の分野では,博士課程を修了した人は,任期付研究員(ポスドク)として一定の期間,さらに研究を続けるのがほとんどのケースです.ポスドクのポジションは以前に比べて格段に増え,いくつかのポスドクの地位を続けることも多くなっています.ポスドクは任期がありますが,新しい考え方や技術を身に付けたり,個人の研究時間を比較的自由に持てる場合には自身の研究テーマや方向性についてじっくり考えたりもできる貴重な機会です.その後,常勤研究者の職に就けるかどうかについては,ポスドクの間に,いかに研究能力を高め,研究業績を上げるかが最も重要です.逆に言えば,(縁故やコネなどではなく)自身の研究能力と研究に対するあくなき情熱が,研究者への道であるといえます.このような個人の能力という内的条件に加えて,その分野に就職があるかという外的条件も満たされないとなりません.地球惑星システム科学は新しい学問分野ですが,地球惑星科学において今後ますますその重要性が増していくと考えています.こうした地球惑星科学システム講座の特性を活かして,院生時代に多角的な視野と深い見識を身につけて, 皆さんが将来は研究者として活躍されることを,私たちは期待していますし,そのための教育を進めています.

地球惑星科学分野に限らず,理系分野全体におけるポスドク問題などは「理系白書」などの書籍でも紹介されていますので,読まれてみてはいかがでしょうか.

●講座について

Q. 内部進学者と外部進学者の比率はどうなっていますか?

年度によるばらつきはありますが,地球惑星システム科学講座の場合,過去5年を平均すると入学者の半数以上が外部進学者です.

Q. 各教員は一人で複数のテーマをもって研究しているのですか?また,院生も複数のテーマで研究するのでしょうか?

地球惑星システムの全体像を把握するために,各教員は複数の研究テーマを持って研究しています.大学院生はその内のひとつのテーマに関連する内容の研究をおこなう場合が多いと思います.もちろん,余力のある方は複数のテーマに挑戦することもできるでしょう.

Q. 協力講座教員の方はどの程度,講座全体の活動に携わっていますか?また,基幹講座教員や他の協力講座教員とどの程度,共同研究をおこなっていますか?

協力講座教員は講座の教育・研究活動の様々な形で携わっています.地球惑星システム科学セミナーでの講演,参加しての議論や講演者の紹介の他,共同でおこなう個別セミナー(例えば地球惑星科学コロキュウム・地球環境コロキュウム)もあります.また,教員間の共同研究もおこなわれており,大学院生も指導教員だけでなく,他の教員からの指導を受ける機会も多いと思います.

Q. フィールド調査や学会発表に出掛ける際に,学生の費用負担はどの程度でしょうか?

研究グループや時期などによって様々です.全額援助される場合もあれば,一部援助となる場合もあります.詳しくは各教員にお問い合わせ下さい.

Q. 副指導教員とはどういうことですか?

特別研究,コロキウム,論文講読の単位認定をおこなう指導教員の他に,別の教員を副指導教員として研究指導を受けることができます.

Q. フィールド調査,解析,理論(モデリング)の各研究室でのバランスを教えてください

研究グループごとに研究手法のバランスは異なっているので,教員紹介ページの研究内容をぜひ参考にしてください.また,各教員にお問い合わせ下さい.どのグループに所属するかによって,修士課程の間に皆さんが軸足を置く研究手法は変わることになりますが,他の研究手法に関しても,日常的なセミナーや地球惑星システム科学セミナーを通じて,研究の進め方や考え方を学んでいただくことは可能ですし,私たちはそれを期待しています.

Q. フィールド調査が多い研究室では年どのくらい調査に行くのですか?修士院生も現地調査(海外も含む)に参加できますか?

各研究グループの年間予定や研究テーマにも依りますが,時間の取れる夏休みの期間にフィールド調査に行くことが多くなります.短期の調査は,学期中でもおこなうことがあります.フィールド調査で修士論文を書く場合には,自身で調査をおこなった上で考えることが何よりも重要ですから,調査には院生も当然,参加します.テーマによっては海外調査もあり,これまでも修士論文のための調査として,米国,カナダ,南アフリカ,中国,東南アジア,パラオなどに院生が出掛けています.具体的なことは,各教員にお問い合わせ下さい.

Q. 公的機関や企業との共同研究や,他の講座との共同研究はおこなっていますか?

地球惑星システム科学講座の研究プロジェクトのひとつである「原生代初期の地球システム変動の解析」は,カリフォルニア工科大学や東北大学,海洋研究開発機構,産業技術総合研究所などの研究者と共同でおこなっています.各教員の研究においても国内外の研究機関と様々な共同研究をおこなっていますので,各教員にお問い合わせください.

また,地球惑星システム科学講座の専攻における位置づけからもわかるように,研究や教育に関して他講座と協力しておこなうこともあります.他講座の教員と共同で主催しているセミナーもあり,講座を越えて,多様な視点で教育をおこなっています.また,地球惑星システム科学セミナーは,専攻や附置研究所すべてにオープンでおこなっており,他講座や研究所から講演テーマに応じて,様々なバックグラウンドを持つ研究者が参加し,活発な議論をおこなっています.

●大学院生活について

Q. 現在,他分野を専攻しています.修士課程から地球惑星科学分野の研究を始める場合に苦労することなどありますか?

他分野から入学した場合,地球惑星科学分野出身者よりも物理や数学,生物学が得意だったり,化学分析の技術を持っていたりと逆に強みであることも大いにありますので,決して苦労ばかりではありません.自分の武器を有効活用してください.とは言え,他分野から入学すると,最初の内は地球惑星科学に関する基礎的知識が乏しいという不利を感じることもあるかと思います.地球惑星科学専攻では,修士課程の科目の一部は,一般基礎科目として学部と共通の講義となっており,入学後に基礎的知識を学ぶことは充分可能です.また,一般基礎科目以外の学部講義を受講して,修士修了の単位とすることも可能になっています(ただし,修了単位に認定される学部講義の単位数は8までです).

Q. 院生は毎日どういったタイムスケジュールで研究を進めていますか?

日々の研究時間の配分については,個人差があり,明確な回答は難しいので,修士2年間について概観します.修士課程修了に必要な講義・演習の単位数は16で,多くの院生は修士1年の間になるべく単位を取得し,修士2年の期間は研究に集中しようとします.そのため,修士1年の間は講義が毎日1つ程度あるのが一般的です.また,講義以外には,研究グループや講座単位のセミナーや勉強会が週に2-3回あります.それ以外の時間を活用して,研究活動をおこないます.学外の活動としては,毎年5月には地球惑星科学分野の最大の学会である日本地球惑星科学連合の年会が開催され,秋には個別分野の学会があります.研究の進展に応じて,学会発表をおこなったりします.フィールド系院生の場合,春や夏の長期休暇の時期を利用して,野外調査に出掛けることになります.

Q. 院生生活の中で,他の研究機関との関わりはどの程度ありますか?

研究テーマにもよりますが,他の研究機関の装置を使って実験や分析をすることや他機関の先生にアドバイスをいただくことがあります.他の研究機関と関わりを持たずに修士を修了することも可能ですが,他の研究機関に出向いて,セミナー発表をしてアドバイスをもらったり,研究の幅を広げたりすることは将来の財産になるので,積極的に外部機関と関わりを持つことをお勧めします.

Q. 研究を進めるにあたって求められる最低限の物理学・化学・数学等の知識の目安を教えてください

所属する研究グループによって異なります.理論や数値モデルを用いて.地球惑星システムを研究する場合には物理学の修得は必須です.実験や観測の研究をおこなう場合には,一般教養課程程度の物理や化学は必要ですし,分析を主とする場合にも,一般教養課程程度の化学の知識があることが望まれます.フィールド調査を主とする場合でもある程度の理系科目の知識は必要と考えてください.詳しくは各教員にお問い合わせ下さい.

物理や化学,数学などの基礎があればそれでよいというものでもありません.それらを繋げて自分の研究対象や研究課題に適用できる力が必要であることも付け加えておきます.

Q. 研究室には何人ぐらい学生がいるのですか?

日常的な教育や研究指導がおこなわれる研究グループ単位では,院生数はグループごとに異なります.基幹講座の全院生数は,他の講座より多く,2011年度は修士課程院生15名,博士課程院生9名です.地球惑星システム科学セミナーや,修士論文,博士論文の中間発表などは,講座の全院生を対象におこなっています.

Q. 研究テーマは,比較的すぐに具体的に決まるものですか?

研究グループや院生個人の興味や学部における教育内容などによって変わってきます.研究テーマをじっくりと自分で考えたいという希望にも応えることができる場合もありますので,各教員にお問い合わせください.

Q. 研究と平行してバイトをしている学生はいますか?

大学院では授業や研究で忙しく,アルバイトを長時間おこなうのは難しいと思いますが,家庭教師など比較的時給の高い職種でアルバイトをおこなっている院生はいます.また,ティーチングアシスタント(TA)として,学部授業や実習、実験の補助をおこなっている学生もいますし,日本学生支援機構の奨学金を受けている院生もいます. 博士課程院生には,日本学術振興会特別研究員に選ばれて,研究奨励金(給料)と研究費をもらい,研究に集中できる権利を得ている院生もかなりいます.

●入試について

Q. それぞれの先生に入試科目の指定はありますか?

基幹講座教員に関しては特に入試科目を指定しておりません.協力講座教員には指定されている方もいますので,地球惑星科学専攻入試ガイダンスページにある専攻紹介資料 (pdf形式) を参考に,各教員にお問い合わせ下さい.

Q. 大学院入試に向けて,どのような勉強をしていくことが望まれますか?

地球惑星科学専攻の入試ガイダンスページに過去問が掲載されていますので,参考にして下さい(英語については2008年度入学志願者向け試験 (2007年実施)から TOEFL-ITP に変更になりましたので,過去問は参考にはなりません.また,本年度実施の入試から一般教育科目の試験方法が変更されますので,ご意下さい).入試対策は試験に受かるための勉強ではありますが,その後の研究の基礎体力ともなりうる勉強です.ぜひ頑張ってください.