「ミクロスケールの大気物理学」とは何か

大気中に浮遊する微粒子であるエアロゾルは、大気放射への直接影響、あるいは雲や雪氷を介した間接影響により、気候状態の大局を決めている気候システム全体の蓄熱量や、生態系にとって重要な水循環に影響を及ぼしています。分子と連続体の境界に位置する微粒子は、物理・化学的性質やそれらの変化過程を簡潔な理論で記述することが困難です。このため、大気微粒子(エアロゾル・雲)が中心となる素過程は、地球気候の分析と予測において最も大きな不確実要因の1つされています(IPCC第5次報告書)。


気候システムへの放射強制や水循環に影響を及ぼす大気微粒子の動力学過程・放射過程について、未解決問題(あるいは新たに提起した問題)の一つ一つに明確な回答を与えられるような研究を志しています。特定の専門分野の考え方や手法に捉われず、最適な考え方や手法を再構築することから始める問題駆動型の研究を行う立場が「ミクロスケールの大気物理学」の意味するところです(これは分野名の主張などではなく、研究の姿勢を簡潔に伝えるための表題の一つという風に解釈してください)。


研究活動

概要:大気微粒子の動力学過程・放射過程の理解のため、「観測手法の開発、現場観測による現象の理解、観測的知見の数値モデリングへの実装」という流れで研究を行っています。

動力学過程:大気微粒子の動力学過程で、理解が未熟なものの代表例は、雲・降水によるエアロゾルの除去過程、氷雲の形成過程です。どちらも、個々の粒子の物理化学特性と大気力学過程が絡み合った現象であるため、現場観測とシミュレーションの擦り合わせが原理的に難しい難問です。私たちは、その難問に挑戦するため、実際の雲・降水過程でどのようなエアロゾルがどの程度除去されやすいかを検出する観測方法論や、実大気中で氷雲の形成を促す固体エアロゾルの定量観測手法を開発しています。特に最近、私たちの研究チームは、湿潤対流におけるエアロゾルの除去効率が雲粒活性化のプロセスに支配されていることを観測的に実証しました (発表資料)

放射過程:大気微粒子の放射過程において、理解が未熟なものの代表例は、黒色炭素や茶色炭素などの光を吸収する黒っぽい粒子の放射効果、氷晶やダストなどの大粒径かつ複雑形状の粒子の放射効果についてです。これらの粒子の放射効果が難しい理由として、放射特性を決める物性・形状・粒径別濃度の定量観測が困難であることと、物性・形状・粒径に基づいた正確な放射特性の計算が困難なことが挙げられます。これらの困難の解決のため、観測手法や理論計算手法を開発しています。特に最近、私たちの研究チームは、人間活動から放出される黒色酸化鉄が、大気加熱効果を持つ放射強制物質であることを発見しました (発表資料)

下記のリンクで内容の一部を紹介します。アップデートされた詳細は、個別にご相談ください。

実験・観測装置

理論・計算手法

観測